アーキ・ヴォイスの
コーディネーターです。
先週の台風が過ぎ去り、
今週は夜、虫の鳴き声を聞き、
秋の気配を感じています。
さて新型コロナの感染者数ですが、
最近は新規感染者の増加率が
抑えられてきているように思います。
タイミング的にGo Toキャンペーンと
連動しているように見えるため、
懐疑的に見ているのですが、
見方がひねくれているのでしょうか・・・
このあたりは、
来週の月曜日、新しい首相が
決まることで方向性が
見えてくると思っています。
といっても、次期首相は
よほどのスキャンダルでも
ない限り、菅義偉官房長官で
決まりそうです。
ところで最近、
『日本経済新聞』で
菅官房長官が中小企業の
再編を促すとインタビューで
語っていました。
「菅氏、中小企業の再編促す
競争力強化へ法改正検討」
(日経のサイトにジャンプします)
内容としてはこんな感じでしょうか。
・中小企業は約358万社あり、
企業全体の99.7%を占めるが、
「足腰を強く」しなければならない
・中小企業の低生産性が
日本経済の足かせになっているため、
「中小の再編を必要であれば
できるような形にしたい」
・中小企業基本法の改正も
視野に入れる
この話、菅氏のブレインと言われる
デービッド・アトキンソン氏の
書籍と内容が全く同じです。
よく知られている通り、
アトキンソン氏は、日本在住
31年のイギリス人で、現在は、
300年続く日本の国宝や重要文化財の
補修を行う小西美術工藝社社長。
ゴールドマン・サックス在籍時に
日本の不良債権を論じて有名になります。
これまで氏の著書は
『新・観光立国論』など、
インバウンドで知られていましたが、
ここ2年ほどは日本の生産性に
関する書籍が目立ちます。
今回の菅官房長官の
インタビューから
来週以降の日本の方向性を
予測できそうに思ったので、
今回はアトキンソン氏の
昨年の書籍を3分で読めるよう、
まとめてみました。
来週からの予習になれば・・・
デービッド・アトキンソン
『国運の分岐点 中小企業改革で
再び輝くか、中国の属国になるか』
(講談社、2019年)
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賃上げによる中小企業改革
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1.未曾有の人口減少
日本から3000万人の労働者が消える
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・国立社会保障・人口問題研究所の
2012年推計では、「2060年までに、
2015年と比較して生産年齢人口が
3264万人減少する」となっている。
これはイギリスの就労人口とほぼ同じ、
カナダの総人口を上回る人数(3頁)
・これからの日本は総人口が
31.5%減る「人口減少の危機」。
生産年齢人口(15歳~64歳)は
さらに42.5%も減少する(27頁)
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2.日本の生き残る道は
賃金を上げること
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・GDPとは・・・
(A)人口 × (B)その国の生産性
・GDPは掛け算なので(A)が減る以上、
(B)の生産性を上げる他、
日本には道がない。しかしこの20年、
日本の生産性はひたすら
落ち続けている。生産性とは
「1人あたりGDP」のことを指すが、
1人あたりGDPの日本の順位は1990年には
世界9位だったものが、今は28位。
給料を見ると、先進国は20年で1.8倍に
なっているが、日本だけは9%の減少を
している(34頁以下)
・「生産性向上」とは、イコール
「賃上げ」のこと(42頁)
・GDPの掛け算を考えると、
(A)の人口が減少する中で唯一、
効果的な手立ては、(B)の生産性を
向上させること、すなわち、
賃金を上げること(42頁)
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3.日本の最低賃金を
引き上げるべき
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・現在、日本の最低賃金は、
韓国、スペインより低く、
ポーランドよりちょっと多い程度。
ドイツ、イギリス、フランスには
遠く及ばない(46頁)
・先に、GDPを上げるには、
(B)の生産性を上げるべき、
さらには賃金を上げるべきといったが、
今後の日本では、二つの観点で
グランドデザインが必要になる(56頁)
1.強い企業の数を増やすこと
2.最低賃金を考えること
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4.日本のネックは
「中小企業」
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・日本特有の社会構造は
中小企業が多いこと(67頁)
・日本経済の最大の問題点は
中小企業で、日本企業の
99.7%を占める357万社が
最大の原因(62頁)
・なぜかというと、
中小企業のは次のような
特徴をもっているから(68~90頁)
・女性が活躍しにくい
・最先端技術の導入にメリットがない
・社員教育ができない
・結果、生産性が低い
・イコール、給与水準が低い
・データを見ると、企業規模と
生産性は強い相関がある。
また高い給料と企業規模にも
強い相関がある。そのため、
大企業を増やす必要がある(99頁)
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5.日本に中小企業が
多いわけは・・・
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・中小企業問題は1963年に
制定された中小企業基本法に
その原因がある(102頁)
・この基本法では、「中小企業」
の定義が世界的に見て小さい規模で
設定された(115頁)
・加えて、小規模なままの
中小企業には、税制上の
メリットがあった(118頁)
・しかし今後は違う。
人口減少で労働者が減るため、
労働者が大企業に移動する(134頁)
・すると、現在の中小企業、
約360万社の中から200万社
が消える計算になる(135頁)
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5.解決策
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・中小企業経営者を自主的に
統合に向かわせるために
最低賃金の引き上げが必要(152頁)
・社会保障負担から試算すると、
2030年には最低賃金が1137円、
2060年には2150円とすべき(157頁)
・経営者は目先の利益しか
見ていない。だから国主導で
賃上げを行う必要がある(173頁)
・少なくとも最低賃金は
毎年5%ずつ引き上げ
なければならない(173頁)
・こうした最低賃金の引き上げは
中小企業統廃合の引き金になる(214頁)
・もし中小企業問題を解決しなければ、
今後の日本は、中国の属国になることも
想定される(240頁)
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以上、1300文字弱、
3分で読めるよう、
まとめてみました。
このアトキンソン氏の
書籍は、先の菅官房長官の
インタビューと内容が
同じです。
最初読んだときは、、
インパクトがあったのですが、
新型コロナウイルス騒動で
すっかりその内容を
忘れてしまっていました。
5日前のインタビューを見て、
コロナ後でもこの方向なのかと
思い、今週見返してみました。
先週、飲食店の大量閉店を
取り上げましたが、現在、
新型コロナウイルスは
社会をまったく違うかたちに
組み替えていっています。
こうした中で、
コロナ前のアトキンソン氏の
提言を行うのがいいのかは
個人的には疑問を持っています。
いい悪いではなく、
平時と緊急時では対応策は
違うべきだとの理解です。
産業セクターによって
被害の度合いもまったく
違いますし・・・
いずれにしても、
来週からの新しい首相に
期待したいと思います。