国民投票のこわさ

アーキ・ヴォイスのコーディネーターです。

さて前回のメルマガでは、
ちょうど投票結果が出た、
イギリスのEU離脱を取り上げました。

それから一週間。
イギリスのEU離脱は「Brexit」と騒がれ、
円相場は1ドル=99円という
2年7ヵ月ぶりの円高、
日経平均は1万5000円を割り込み、
16年ぶりの下げ幅を記録しました。

今週に入ってだいぶ落ち着きを
取り戻しましたが、
英国民のEU離脱を先導してきた
ボリス・ジョンソン氏は保守党の
党首選に出馬しないとのこと。
離脱に向けて今後の進み方が変わりそうです。

悲観的なシナリオとしては、
イギリスが離脱に突き進み、
スコットランドが独立、
経済成長率がマイナスに転じ、
イギリスのGDPが縮小する、とか。

(逆に楽観的なシナリオは、
牛歩戦術で離脱交渉先延ばし、とか)

こうした結果を招いたのが
国民投票ですが、
今回のイギリスの様子を見て、
ちょっとおそろしく感じました。

キャメロン氏は負けることを、
ジョンソン氏は勝つことを、
想定していたのでしょうか。

二人とも人々を煽っておいて、
かっこよく舞台を降りてしまいました。
結果、現在は誰も責任をとらず、
国民全員で決めた、という結果だけが
残ってしまいました。

そもそもイギリスには離脱の是非を
国民投票で諮った前例がありました。

1975年、ハロルド・ウィルソン氏が
労働党の意見が二分されていたため、
国民投票を実施。結果、イギリスは
欧州経済共同体 (EEC) への
残留を決めました。

キャメロン氏はこの前例を
イメージしていたはずですが、
今回は逆の結果に・・・

最終的に不利益を被るのは、
イギリス国民だと思います。
この経緯を見ていると、
学生時代に読んだ、
エーリッヒ・フロム
『自由からの逃走』を
思いだしました。

今となってはうろ覚えですが、
ドイツの人々が、自由にともなう
不安や孤独から逃れるため、
ナチスという権威につきしたがっていった、
といった感じの内容だったと記憶しています。

今後、EUに加盟する各国で
国民投票が多用され、
EUの解体とそれを発信地とする
混乱へと進むことを危惧しています。

その意味で、このタイミングでは、
国民投票が他の国でも
実施されないことを願っています。