石油資源が尽きるリスクを直視し、いち早く産業の多角化を目指したドバイ。その施策の目玉が、「フリーゾーン」だ。
フリーゾーンはいわば自由貿易地域というもので、外国資本を導入するばかりでなく、世界の最先端の技術を取り込むことを目的として、設立された。シンガポールや中国などの国々が経済特区の設置によって大きく発展したのと同様、ドバイの急速な経済成長もフリーゾーンによる外国企業誘致の功績を抜きにしては語れない。
ドバイを含むアラブ首長国連邦(UAE)で会社を設立するためには原則51%以上の現地資本の参加が必要だが、フリーゾーンでは外資100%企業の設立が許可されており、加えてさまざまなインセンティブを受けられる。フリーゾーンは、会社法の枠外で各首長国の法令に基づき設立され、多くの優遇制度を持つため、外国企業の立地に適している。たとえば、法人税や輸出入の関税が免除されるなどのインセンティブが付与され、進出企業にとって税制面のメリットは小さくない。また、資本や利益を国外に自由に送金でき、現地人を雇用しなければいけないなどという義務を負う必要もないため、外国企業は事業を進めやすいだろう。企業にとって最も魅力的な潜在的可能性を秘めるドバイをはじめ、UAE各地のフリーゾーンでは、急成長中の経済そして政治的安定の中、自由市場環境、最先端のインフラ、非課税政策が提供されているのだ。マイクロソフトやIBM、ヒューレッドパッカード、キヤノン、ロイター、ソニーなど、世界の名だたる企業も、その恩恵を最大限に生かしながら、ドバイで積極的な経済活動を行っている。
フリーゾーンにおける主な優遇措置は、以下の通り。
- 100%外国資本による所有可
- 法人税・所得税50年間免除(更新可能)
- ローカル・スポンサー(サービス代理人)不要
- 資本、利益の本国送金自由
- 外国人労働者雇用制限なし
- 保税区
- 長期土地リース可
ドバイに初めてフリーゾーンが誕生したのは、日本がバブル景気に突入する直前の1985年。世界最大の人口港であるジュベル・アリ港を中心に設立された、ジュベル・アリ・フリーゾーンがそれである。ジュベル・アリ・フリーゾーンは、ドバイのみならず、中東全域においても初のフリーゾーンだった。それゆえ、この前例のない巨大プロジェクトの成否に注目が集まったが、外国企業に対するさまざまな優遇措置を講じて誘致を進めた結果、現在では全世界から7,100社以上の企業が進出している。そのうち、日系企業は、ブリヂストンやホンダ、シチズン、ケンウッドをはじめ、およそ150社を占める。
ジュベル・アリ・フリーゾーンにおいては、外資100%での現地法人の設立が可能だ。もちろん、他のフリーゾーンと同様に、無税、外国人労働者の雇用制限無し、利益・配当の本国送金自由、各種手続きのワンストップ化などのさまざまな優遇措置も受けられる。
現在は、ジュベル・アリ・フリーゾーン内に、日系企業専用に中近東アフリカ進出支援を行うため、進出バリアを大幅に軽減してトライアル的進出を後押しする、2年間限定のインキュベーション・プロジェクトが設置されている。今が、ドバイに進出拠点を置く、またとない好機と言えるかもしれない。